劇団新感線とGOちゃんのコラボ。
これは観にいかなくちゃ!
というわけで「IZO」を観に青山劇場に行ってきた。
最初「人斬り以蔵」の話でけっこうリアルに人を斬るって
聞いていたので「ちょっと怖いのかな〜〜」と覚悟して出かけたら
全然怖くなかった。
それどころかGOちゃんの以蔵は、どこまでも純粋でかわいそうでした。
岡田以蔵=GOちゃん
ミツ=戸田恵梨香
武市半平太=田辺誠一
坂本龍馬=池田鉄洋
田中親兵街=山内圭哉
山内容堂=西岡徳馬
時代は幕末。
鎖国状態の日本は黒船に開国を迫られていた。
幕府をあてに出来ない武士達は
尊皇攘夷運動を起こし暗殺が横行した。
土佐の武市(たけち)半平太は、道場を開き
足軽や郷士など、身分の低い武士たちをまとめていた。
そんな中、足軽の以蔵は幼なじみが上級武士たちに殺されるという事件に見舞われる。
その幼なじみが残した言葉は「妹を頼む」だった。
以蔵は幼なじみが入門していた武市半平太の道場に入り
理不尽な世の中を自分の刀で変えると誓う。
土佐、薩摩、長州など尊皇攘夷を唱える力が終結しつつあったが
幕府のほうも巧妙に人をあやつり欺き
次第に勤皇派を追い詰めていく。
以蔵は、武市に傾倒しただ武市の後ろをついていくしかなかった。
「先生の役に立ちたい。先生に見放されたらどうしていいかわからない」
そんな焦りから、上士の暗殺に飛び込み名乗りをあげ
「オレに斬らせろ」と大勢の武士に天誅を下していった。
良かれと思って天誅を繰り返した以蔵。
だが以蔵の振る舞いは、非常に危うく、武市の肝を冷やした。
武市に見放されたと思い、あせる以蔵だったが
坂本龍馬から「勝海舟の警護を頼む」と言われ
とまどいながらも勝海舟の警護を引き受けた。
これが勤皇派の足元をゆるがすことになった。
勝海舟は、幕府に「開国は時間の問題」と外国の様子を見せていた。
勤皇派を支持していた天皇の勅使も外国の勢力を恐れ、支持を変更。
のちに勤皇派は藩士にとらわれてしまうことになる。
武市は以蔵に怒り、去っていく。
それでも武市に見放されたくない以蔵は
幼なじみの妹ミツが「侍をやめて一緒に生きてくれないか」と懇願しても
「自分は侍でしか生きられない」と人斬りを繰り返した。
そんな以蔵に失望したミツは、叔父の勧めで見合いをし、嫁いだ。
だが以蔵に別れを言いに来た時、武市からの差し入れだという酒を飲み毒殺される。
それは、土佐に戻り藩士に拷問を受けている武市が
まだ京に潜んでいる以蔵が万が一幕府に捕まると
今までの暗殺計画を喋ってしまうのではないか、それなら毒を盛って殺してしまえ
という命令だった。
以蔵も毒入りの酒を飲んだが命は取り留めた。
そして幕府に捕まり土佐に送られてきた。
藩士の前で武市と再会した以蔵。
幕府の取調べに対してまるで抜け殻のように
自分が天誅を下した武士の名前をあげる以蔵。
だが首謀者の名前を「武市」とは言わずに「天」の命令で天誅を下した、と言う。
「天は動いている。幕府も終わる」と以蔵は最後に言って28歳の命を散らした。
また、それを聞いていた武市も山内氏に
「以蔵の言うとおりかもしれません」と幕府の終わりを予想するような
言葉を言い残して切腹した。
それからしばらく時は流れて幕府の時代は終わった。
人斬りが主人公のストーリーだけど
GOちゃん演じる以蔵は、頭が弱い分自分の主人の武市には忠実で
そのまっすぐさから武市も少々手をやいてしまう。
だって頭で考えるよりも体で動くほうが得意な以蔵だから(^^;)
土佐と薩摩、長州で幕府の人間を暗々裏に天誅を下す手はずを整えているうちに
単身乗り込んで「わしに斬らせろ!わしは土佐の以蔵だ!」と叫んで斬りまくり、
相手に自分を売り込んで武市に怒られたり
怒られてるそばから人を斬ったバイト代をもらえるか武市に聞いたり
ダメだって言われてるのに暗殺に勝手についていったり
ボロボロの着物を着て、真っ黒になって走り回っている姿は
本当に「のらイヌ」みたいでした。
そんな以蔵が武市に見放されて勝海舟の用心棒をしたあたりから
話がおかしくなってきて・・・。
武市も以蔵が無鉄砲で単細胞なのをよく知ってたんだから
暗殺計画から外してばかりいないで
もう少しうまく使ってあげたら
以蔵も迷うことがなかったかもしれないのにね。
武市達がたまに影で以蔵を「イヌ」呼ばわりしてたのを見て
「元々以蔵を本当の部下としては認識してなかったんだろうな・・・」と
かわいそうになってきた。
それに以蔵が斬るたびに血しぶきが飛んで凄惨な殺人シーンが繰りひろげられるんだけど
斬れば斬るほど以蔵がかわいそうで何だか涙が出てしまいました。
それに幼なじみのミツもかわいそうだった。
兄を位の高い武士に殺されてひとりぼっち。
都の叔父さんを頼って上京して茶店で働きながら
人斬りの以蔵を気遣い、自分を気遣ってくれる叔父のキモチにも気を遣い、
思いを寄せる以蔵に思い切って告白したのに
肝心の以蔵には「自分は侍しかできない」とフラれて傷ついて
叔父さんの勧めた縁談を承諾する。
その相手は、お世辞にもイケメンとは言えない軟弱なお金持ちのボンボン。
まるで以蔵と正反対のお見合いの相手だったけど
あのときのミツには、それしか選択肢がなかったんだろうね・・・。
でも結局以蔵に最後にお別れを言いに来たところで
毒殺されてしまって・・・。
その後以蔵は、幕府に囚われて今までの全ての罪を問われて
それでも武市達の名前は挙げず、
本当にのらイヌみたいな悲しい最後だった。
つかまった時の以蔵の姿は、すっごく惨めでかわいそうでした。
以蔵とミツ、2人が生まれた時代が少しずれていたら
幸せになれたかも・・・。
でも以蔵も以蔵よね、女性が思い切って告白してるんだから
そのキモチもわかってあげなきゃ・・・。
しかも自分もミツのことを気にかけているのに。
・・・ムリか、以蔵だから(笑)
GOちゃんは、小柄で華奢で本当に身軽に動いてました。
声が少しかすれてて聞き取りにくいセリフもあったけど
殺陣の目つきの鋭さとか、本当に人を斬っているみたいでした。
殺陣の時、切られた相手が絶妙のタイミングで血を吐いたり
斬られた一瞬の間に着物が切れていたり
舞台の後ろで町並みを影絵で表現してそこで
うまく殺陣のシーンを作っていて「おおっ!!すごい!!」って感心してしまいました。
それにしても、あの着物はどうやって切れているように見せたんだろう?
舞台ってすごいね〜〜。
以蔵が最後に役人に引かれて行くとき万作の花が空に舞って
役人が「この黄色い花はなんだ!?」と声を上げると
以蔵が「万作の花だ・・・少しの間見ていていいか?」と役人に言う。
役人も「お前が花の名前をしってるとはな」と少し立ち止まってくれるのよ。
万作の花は、ミツの名前の由来。
以蔵はきっとミツを思い出していたんだね・・・
そして「少し・・・走りすぎたかのう・・・」と言い残して
最期の時を迎えるのよ・・・。
以蔵・・・気付くのが遅すぎたね・・・(T_T)
まあ・・・幕府も時代の変化に気付かなかったんだけど・・・。
見終わっていろいろな意味で虚しさが残る舞台でした。
ぬーの生まれたこの時代は、平和ボケしすぎているのかも。
本当の自由と平和と平等って何だろう、と考えさせられました。
でもGOちゃん&田辺さんは明るく元気な舞台で逢いたいな。
なんたって劇団新☆感☆線なんだから。