剛ちゃんの舞台  ICON26B.GIF - 2,668BYTES



鉈切り丸を観て来た。
劇場は、シアターオーブ。
渋谷駅に隣接しているヒカリエの中にある劇場です。
初めてよ、シアターオーブは。

さらに楽しみだったのは、今回の舞台、いのうえひでのりさんが演出で
和製シェイクスピアの「リチャード三世」だっていうじゃない。
リチャード三世といえば、毎年SHOCKでやらっちに光一王子が
「絶望して死ねぃ!」って言うアレよね(笑)

ちゃんがリチャード三世を演じるのか。
背格好がちょうどいい感じだと思う。

源範頼(みなもとののりより=鉈切り丸)=ちゃん
巴御前(ともえごぜん)=成海璃子

源頼朝=生瀬勝久
北条政子=若村麻由美

源義経=須賀健太
イト=秋山菜津子
梶原景時=渡辺いっけい

時代は平安末期
源頼朝の弟、源範頼(幼少の名前が鉈切り丸)は生まれながらに背中に瘤、顔には痣。
馬にさえ乗れない。
でも頭脳は明晰。
頼朝義経と違い産みの母親がどこの誰ともわからない。
体が不自由な分、兄のそばにおいてもらうしかない身の上。
範頼は、ずっと自分の身の上を呪って生きてきた。
そんな中、次第に野望を抱くようになる範頼

「歴史に名を残してやる。そのためには親兄弟だって手にかける。
悪の限りを楽しんでやる!」

木曽義仲を手にかけ、義仲の妻巴御前をムリヤリ自分の妻とした範頼
巧みな話術で兄頼朝、弟義経を操り、お互いに疑念を抱かせて
2人が範頼を頼るように仕向ける。
頼朝義経を追うように仕掛けたのも範頼
義経は、切腹させられた。
頼朝達の家臣も操り、討ちあいさせたり
果ては、頼朝を毒殺。
その罪を範頼自身の側近にかぶせて殺害。
さらに頼朝の娘を嫁にもらい、自身が将軍になるために
身重の巴御前を子供ともども殺し
北条政子に「妻が早産の苦しみに耐えかねて舌を噛み切った」と嘘をつく。
全て範頼の思惑通りになるかと思われた。
しかし、一度は範頼になびいた頼朝の家臣、梶原が
範頼の悪事を調べ上げ、追い詰めた。
その頃から範頼は、自分が手にかけた巴御前義経の亡霊に悩まされるようになる。
亡霊や、源氏に追われて逃げのびた
範頼が流れ着いた田舎に偶然範頼の母親も保護されていた。
イトという母親が範頼
に告げる。
鉈切り丸って名前はわたしが付けた。生まれたお前を殺そうと
わたしは鉈を振り下ろした。でもお前は生き延びた。そこから名づいたんだ。
お前なんか生まれなければ良かったのに」
時折自分を悩ませていた頭痛の原因が実の母親の恨みからきていたと知った
範頼は、母親も殺した。
そして「頭痛の原因を断ち切った!」と喜んだのもつかの間
範頼は、北条政子達に居所をつきとめられ、囲まれた。
歴史に名を残したい範頼北条政子

「お前など、歴史に名前は残らない!」と言い切り
範頼は、討ち取られた。
死に行く間際、範頼は「これで終わりか・・・・・」と空を見上げた。

なんといっても
ちゃんの凶悪さ加減がハンパない
リチャード三世らしく、体が曲がっていて、足を引きずってる。
これで鎧を着て約3時間演じるんだからすごい。
声も押し殺してつぶやくようなせいセリフが怖い。
今までで一番合ってる役だったかも。
木曽義仲を討ち取って、その妻をムリヤリ妻にするなんて。
その事を隠すようにには偽名を名乗らせて祝言を挙げ、
頼朝達にはいかにも素直で兄弟思いの範頼を演じている。
でも腹黒い〜〜〜(笑)
最初は、本当に巴御前が気に入ってて子供を身篭った時だって
本当に喜んでいたのにね(^^;)
出世のためにいとも簡単に殺してしまうという残虐さ。
とは、添い遂げて欲しかったわ。

義経役の須賀健太君は、喰いタンで共演したときは
まだ半ズボンのぼっちゃんだったのにすっかり大人になっちゃって
義経を見事に演じてたわ。
純粋に2人の兄を慕っていた義経
でもちゃん・・・・・いや、範頼にまんまと騙されて
何も悪いことしてないのに頼朝に追い詰められて切腹。
義経って最後がどうなったか諸説あるから
ああ、こんな無念の最後だったのかもな・・・って納得してしまった。
それにしても範頼ってひどいわね(^^;)

頼朝を演じたのは生瀬さん。
わりと残虐なシーンが多い戦国のお話で
頼朝が能天気&いい加減だったのがいい意味でふざけてて良かった。
さすが劇団新感線だわ。
それでも範頼を心から信頼してハマっていく頼朝
「あ〜あ・・・・騙されちゃったね、アンタ・・・」と教えてあげたかった。

北条政子は、若村さん。
色が真っ白でおきれいでした〜〜〜〜(*^^*)
怖い北条政子・・・似合ってました。
頼朝亡き後、範頼の悪事を終結させた人。
でもあの人だったら、もう少し前に範頼の悪事に気づけたんじゃないかな。
それから頼朝の娘、乙姫様が原因不明の顔の痣に悩んでいたけど
あれって何であんな病気になったんだろう?
範頼に殺された人々の怨念か?
でも範頼は、その姫の痣さえも出世の道具にしようとしてたね。
「姫とわたしは、同じ痣がある。そんなわたしが姫のそばで少しでも慰めになるなら」
などと政子に言い寄って乙姫を嫁にもらおうとしたけどさ、
結局その前に討ち取られたじゃない?
その後、乙姫の病気は治ったんだろうか?

範頼
は、体が不自由だったけれど動きはすばやかったわ。
「体が不自由な分、そういう戦い方を心得てる」みたいな事を言ってたけれど
殺陣もすごかったわよ。
それと、リチャード三世では「馬だ!馬をくれ!かわりに国をくれてやる!」って
叫ぶシーン(あくまでもSHOCKの劇中劇だけど)があったけど
鉈切り丸では「トビよ!羽をくれ!!」っていうセリフがあった。
シェイクスピアでは、馬で自由に大地を駆けるイメージが
トビの羽で自由に世界を飛びまわるイメージだったのかな。

もしも自分があんな範頼みたいな体に生まれたら
世の中すべてを恨んで生きていくかもね。
容姿が醜くていつも誰かが哀れみを持って自分に接していて、
哀れに思った人間に頼って生きていかなきゃならない。
たぶん頼朝達は、範頼の面倒を「みてやっている」と思う事で
少なからず自分達が善人になっているという優越感に浸っていたんじゃないだろうか。
周りの人からの扱いを肌で感じ続けている範頼だからこそ
世の中への恨みとか健康な人間への恨みがどんどん重なっていったんじゃないかな。
ただ、彼の場合、ただ恨みの一生じゃなくて
頭脳を活かして世の中を手に入れて頂点に立とうとした。
それだけ世の中を恨んでいたって事よね。
結局、目標達成目前で討ち取られたわけだけど
範頼は、自分以外信じられる人がいなかったから負けたんじゃないだろうか?
雨の中死んでいく範頼
は、哀れだった。

全体的にわかりやすい舞台でした。
和製リチャード三世。いいじゃない。
再演もいいなぁ・・・待ってます。